一人っ子が親の財産管理を任されたとき、最初から通帳や印鑑をすべて預かる必要はありません。先に行うべきなのは、財産の全体像、毎月の支払い、親の希望を親子で確認することです。
整理する順番は次のとおりです。
一人っ子は兄弟姉妹との調整が少ない半面、情報収集、支払い、介護、実家管理を一人で抱えやすくなります。「自分が全部やればよい」と考える前に、どこから外部の支援を使うかも決めておきましょう。
財産管理は、口座残高を知ることだけではありません。収入、支出、契約、不動産まで把握して初めて、介護が始まったときに必要な資金を判断できます。
確認するものは次のとおりです。
通帳が見つからない口座や、紙の書類がないネット契約もあります。郵便物、メール、確定申告書、固定資産税の通知などを親と一緒に確認しましょう。
暗証番号やパスワードを聞き出して家族が使うことが目的ではありません。どこに何があり、緊急時には誰へ連絡するかを分かる状態にすることが目的です。
財産を一覧にしたら、預金を用途別に整理します。口座そのものを必ず分けるという意味ではなく、何のためにいくら残すのかを親子で共有します。
食費、光熱費、通信費、税金、保険料、医療費など、定期的な支出を確認します。口座振替になっているものと、現金で支払っているものを分けると、親が手続きをしにくくなったときの影響が見えます。
家族が支払いを手伝う場合も、親の口座と子どもの家計を混ぜないことが基本です。立替払いをしたときは、領収書と精算内容を残します。
在宅介護、住宅改修、入院、施設入居では必要な費用と支払い時期が異なります。正確な金額を今決められなくても、年金収入だけで足りるか、預金を取り崩すか、実家の売却が必要かを話し合えます。
例として、施設費を親の年金と預金で支払い、不足が続く場合は実家の売却を検討する、といった優先順位を決めておきます。これは売却を確定する話ではなく、親が判断できなくなった後に家族が迷わないための確認です。
医療費、家の修繕、葬儀など、時期を予測しにくい支出にも備えます。すべての預金を長期運用や定期預金へ移すと、急な支払いに対応しにくくなる場合があります。
親の生活を守るためのお金なので、利回りだけでなく、必要なときに動かせるかを優先して考えます。
実家の問題は、親が施設へ移ってから表面化しやすいものです。空き家になっても、固定資産税、火災保険、庭木の手入れ、修繕、防犯などの負担は続きます。
一人っ子が遠方に住んでいれば、定期的に様子を見に行くだけでも時間と費用がかかります。親が元気なうちに、次の希望を聞いておきましょう。
親名義の不動産は、子どもが固定資産税を負担していても、勝手に売ることはできません。親が売買契約を理解できない状態になると、法定後見などの手続きが必要になる可能性があります。
将来の売却可能性が高い家庭では、家族信託によって管理・処分権限を子どもへ託す方法も検討できます。ただし、不動産を信託する登記や契約設計には費用がかかるため、売却予定がない家庭まで一律に選ぶものではありません。
親を支えようとする気持ちがあっても、方法が曖昧だと後から問題になります。
通帳やカードが手元にあっても、親に代わる正式な権限を得たことにはなりません。親の意思確認が難しくなれば、銀行で取引を制限される場合があります。
親本人が取引内容を理解できるうちに、銀行の代理人制度が使えるか、将来どこまで対応できるかを確認してください。
少額の買い物でも、親のための支出と自分の支出を分けます。現金でまとめて引き出す場合は、使途を記録し、領収書を保管します。
一人っ子だから説明相手がいないとは限りません。親の配偶者、親族、成年後見人、税務署などへ、後から支出の根拠を説明する場面も考えられます。
認知症対策のためでも、親の預金を子どもの口座へまとめて移すことは避けるべきです。贈与と見られる可能性や、親の財産を不当に処分したと疑われる問題があります。
家族信託を利用する場合も、単に子どもの財産にするのではありません。信託財産として分別し、契約に沿って親のために管理します。
財産管理の方法は、親が今どこまで判断できるかによって変わります。
親が自分で管理でき、家族は時々手伝う程度なら、財産一覧と連絡先を共有し、銀行の代理人制度を確認するところから始めます。
親が将来の管理を任せたいと考えており、契約内容を理解できるなら、財産管理委任契約、任意後見、家族信託などを比較できます。預金と実家を子どもが継続して管理したい場合は、家族信託が候補になります。
すでに本人が契約内容を理解できず、口座や不動産の管理が必要なら、家族の判断で新しい契約を作ることはできません。取引銀行への相談と、家庭裁判所を通じた法定後見を検討します。
医師から認知症と診断されたかだけではなく、契約の内容と結果を本人が理解できるかが重要です。判断が微妙な場合は、家族だけで決めず専門家へ相談しましょう。
家族信託は、一人っ子が親の財産を何でも自由に使える制度ではありません。親が指定した財産を、契約で決めた目的のために管理する仕組みです。
次のような家庭では、検討する理由があります。
一方、財産が日常用の預金中心で、高額な取引や実家売却の予定がない場合は、銀行の代理人制度などで足りる可能性があります。また、一人っ子が受託者として収支記録や財産管理を続けられないなら、家族信託を選ぶだけでは問題を解決できません。
受託者には信託財産を自分の財産と分け、帳簿や領収書を管理する責任があります。契約時の便利さだけでなく、数年、十数年と運用できるかを確認してください。
預金、実家、介護契約には、それぞれ異なる権限が必要です。親子だけで調べると、家族信託ですべて解決できるように感じたり、反対に難しそうだから何もしないままになったりします。
家族信託の「おやとこ」は、家族信託が必要か、ほかの制度を使えないか、費用がどの程度かについて無料相談を案内しています。全国から相談でき、来社、訪問、オンラインなどの方法に対応しています。
公式サイトでは、契約締結後の継続サポートや、収支記録、領収書の保存、報告書作成を補助する家族信託専用アプリも案内されています。一人っ子が受託者になる場合は、次の点を相談時に確認するとよいでしょう。
家族信託を申し込むことを先に決めるのではなく、親の財産と希望を伝え、銀行の制度だけで足りない部分を確認するために相談するのが現実的です。
一人っ子が親の財産管理を任されたら、最初に財産一覧を作り、生活費、介護費、実家の扱いを順番に確認します。通帳やカードを預かるだけでは、将来の正式な管理権限までは準備できません。
日常の預金管理で足りるなら銀行の代理人制度、将来の身上保護も必要なら任意後見、預金や実家を継続して管理するなら家族信託を比較します。すでに親の判断能力が不十分な場合は、銀行への相談と法定後見が中心になります。
一人っ子がすべての手続きを自力で背負う必要はありません。親が希望を伝えられるうちに、家族が担当する範囲と専門家へ任せる範囲を決めておくことが、将来の負担を抑える備えになります。